第8章 触れて離れて
「征十郎さ、バスケ部楽しい?」
「ん? それはどういう意味だ?」
「いや……バスケ部の中にいる征十郎、凄く生き生きして映ったから」
素直な感想だった。けれど征十郎はやはり「そうか?」と返すだけで、下宿先まで到着する。先についていたメンバー達は、疲れて地に伏していた。
「だらしないぞ、お前達」
「げっ……赤司じゃねぇか」
「赤ちんお腹空いた!」
「飯にはまだ……早いのだよ」
「荷物を置いたらすぐに練習だぞ」
メンバーの悲痛な叫び声が、木霊した。
後から到着したさつきちゃんと黒子は、それ以上にばてばてで今にも気を失いそうになっていた。さつきちゃんは部屋へ、黒子は可哀想なことに青峰に引きずられて練習へと向かった。
「有栖っち!」
「何かな、黄瀬」
「今日こそバスケ部の練習、見に来ないっスか!? 料理しに来るだけなんてつまんないじゃないスか」
「それもそうだけど……」
「赤司っちもきっと了承してくれるっスよ。んで、練習終わったら皆で遊ぼうね」
「黄瀬は元気だね……」
「その理由、教えてあげようか?」
するりと彼の手が、私の頬に滑り落ちる。
「有栖っちと、一緒にいれるからだよ」
「……黄瀬」
「おい黄瀬」
「うえっ!!? 赤司っち!?」
黄瀬の背後に現れたのは、やはり征十郎だった。彼は「何をしている?」と思わぬ満面の笑みで黄瀬を見つめた。