第7章 影は静かに見え隠れ
「僕は、君と一緒に花火が見れるなら、それでいいんですよ」
「……何気持ち悪い事言ってんの」
「愚図な君は、一人で帰ることも出来ない。他の誰を選んだって、結局そんなことを考えてしまうくらいなら、僕に恩を売ってそれからまた後で返して下さいよ。学食を奢るなり」
「やっぱ黒いな、うん、黒い」
「それでも、君は誰を選びたかったのでしょうか……」
「……」
誰を。
「選ぶとか選ばないとか、そんなのどうでもいいっ。ただでも、そうだなぁ……黒子でよかった、ありがとう」
「……はっ、きも」
「おい」
彼の背中は、思っていたよりも大きくて男らしくて。そんな当たり前のようなことを知って、でもやっぱり黒子は黒子なんだって改めて理解して。だけど本当は、それだけじゃまだまだ足りないなんてわかるはずもなくて。
黒子が今、どんな表情を浮かべているのかさえ、私は知ることが出来ない。