第6章 金魚鉢の思い出
ああ、心細い。こうして沢山の人の海に溺れて、私は一人。こんなことなら、はぐれないようにと理由をつけて彼に手を繋いでもらえばよかっただろうか? 携帯を取り出して、電波がほとんどないことを知り「この人混みだもんなぁ」と苦笑いを浮かべた。
聞こえてくる太古の音、人の声、ぼんやりと灯るぼんぼり。一人で見るこの景色全て、色をなくしたみたいに虚しい。早く、早く敦君に会いたい……。
「あれ?」
気付けば私は、人気のない神社の方まで来てしまったようで、そこだけ薄暗くて喧騒も遠く、人の気配を感じない。
「お、おかしいな……」
「あっれぇ? お嬢ちゃん、一人でこんなとこいたら危ないよ?」
嫌な予感がした。振り返れば、嫌な顔をした三人組の男が立っていた。流石の私でもわかる、これは、やばい。
「一人じゃないです」
「へぇ、じゃあ連れは何処にいるのかな?」
「……それはっ」
「お嬢ちゃん、もしかして迷子? お兄さん達が案内してあげようか?」
「あ、でもその前に……ちょっとばかし、お礼ってことでお兄さん達といいことしようね?」
「やっ……!」
距離を詰められ、腕を掴まれる。恐怖で上手く声が出ない。