第6章 金魚鉢の思い出
「へへっ、痛いことはしないから。大人しく……っ」
「やめ……っ!!」
嫌だ、やめて離してっ!!
「いてっ!」
「……?」
一人、男の人がいきなり倒れ込んだ。それに驚いた男達が自分達の背後を見るが、そこには誰もいない。いや、正確には”いないように見えている”だけだ。
「あ……? バスケットボール?」
「っ……!」
「あ!? おい、お前達!!!」
男達がボールに気を取られている隙に、見知った彼が私の手を掴んで走り出す。慌てて走り出したせいで下駄を片方、落としてしまう。
「あ……っ!」
「……っ」
それに気付いた彼は、私を半ば無理矢理おぶさると、再び走り出す。上手く人混みに紛れて、男達は小さくなっていった。
「はぁ、はぁ……はぁ……」
「どうして……?」
彼の暖かい背に、身体を預けながら申し訳なさと何故ここがわかったのか、そのことで頭の中がいっぱいだった。
「どうして、でしょうね……」
淡い水色の髪が、揺れた。