第1章 凸凹なふたり
「へっ……?」
「物欲しそうな目で見てるから、食べたいのかなって」
「……。い、頂きます」
受け取ろうとすると、何故かふいっと上げられ取り損ねる。
「ちょっと……?」
「あーん」
「……おい」
「ほら、早く。あーん」
「……あ――……ん」
こいつ、今出会ってまもない女にあーんしたぞあーん。そういえば、男の人にあーんされるの初めて……。
「……お外走ってくるぅううううう!!!」
「もうお外だよ、有栖ちん。ほら、駆け出そうとしないの」
「離して敦君! 私は今物凄く恥ずかしくて逃げ出したいだけなんだ!!」
「ずぶ濡れで帰る気? 俺が傘の中にいれてあげた意味ないし」
「ううっ……」
ぎゅっとしっかり掴まれて、振りほどけない。意外と力も強くて、これは逃げ出せそうにない……。