第1章 凸凹なふたり
「てかね、敦君! もっと私のこと馴れ馴れしく呼んでくれない!? 私だけ君を下の名前呼びは寂しいでしょ」
「えっ、寂しいの?」
「ああもうじゃあいいですよぉおおおお」
私ったらさっきまで初対面だった人に、何を恥ずかしいこと言ってるんだ!!
恥ずかしさから逃亡しようとすると、腕を掴まれ引き留められる。
「もう、ごめんって。えっと……有栖ちん」
「……何それ」
「やだ?」
「ううん、いいよ」
「ん、じゃあもう傘の中からいきなり出て行こうとしないように」
「はぁい」
再び彼を見上げてみる。顔綺麗、結構整っててかっこいいかも? バスケ部ってことはモテるのかな……きっとバスケしてる時の彼は、かっこいいんだろうな。ていうか何だ、私はなんでそんなことを一々考えているんだ!! なんかもうこれってまるで一目惚れしてる人みたいじゃない!? そんなわけないし! だってさっき出会ったばかりで……。
ごちゃごちゃ考えていると、敦君の流し目で私を見つめて「んっ」と一本ポッキーを突き出した。