第5章 数センチの距離
「あった!」
帰宅後、すぐに見つけることが出来た浴衣だったが、残念なことにしわくしゃになっていた。洗ってすぐに干せば乾くかな。
突如、着信を告げる音が部屋に鳴り響く。慌てて携帯をひっつかめば、着信の相手は征十郎だった。
「もしもし?」
『有栖か?』
「私以外が出ると思いますか?」
『いや、念の為だよ。ところで明日花火大会があるのは知っているか?』
「うん、知ってるよ」
『……一緒に行く相手は決まってるのか?』
「えっとね、黒子と黄瀬とさつきちゃんの四人で行く予定なんだよ。征十郎、もしかしてお祭り行くの?」
『こっちは俺と紫原と緑間の三人でな。気分転換にと……おや? 青峰は誰からも誘われてないのか』
「……可哀想だね」
まるで新手のいじめみたいだ。何より、誰もそれを意識していたわけではないという点が最高に質が悪い。
『なら青峰は俺から誘っておこう。そっちが良ければ、後で合流しないか?』
「それいいかも! 皆で行く方が楽しみだもの」
『……有栖ならそう言うと思ったよ。それじゃあ、時間は……――』
征十郎に告げられた時間をメモすると、電話は切られた。すぐにメールでこのことを黒子に報告すると、了解が取れたので明日はなんだかんだ皆でお祭りを満喫することになるのだろう。