第3章 夕陽が沈む頃
「送らなくていいよ、学校から家はそんなに遠くないし」
「でも女の子が一人でなんて、危ないっスよ」
さりげなく鞄を奪われ、図書館の入口へと彼は先に向かう。ああもうどうにでもなれ! 投げやりな気持ちで、彼の後をついていく。
「有栖ちゃんってよく図書館にいるんスか?」
「ん――そうかも? 好きなんだ、本が」
「そうなんスか! 俺の部活仲間にも、本が好きな人がいるんスよ」
「ああ……なんとなく、誰かわかる」
「バスケ部の人と知り合いだったり?」
「そうだね……何故かね」
「じゃあもうバスケ部のマネージャーになればいいのに」
「いいよ。確か凄い可愛いマネージャーいるらしいじゃん」
一度も見たことはないけど。
「あっれぇ? 有栖ちんじゃん」
「!! あ、敦君!?」
「お、紫原っち!!」
「……なんで黄瀬ちんといるの?」
「成り行き……?」
「友達なんスよ!!」
黄瀬が私の肩をがっと抱き、自慢げにそして誇らしげに言う。なんでそんなどや顔なわけ? 少しむかついたので彼の足を踏んでみた。
「いった!! 何するんスか有栖ちゃん!」
「気安く触りやがるので」
「もう、ほんと酷いんだから……」
「黄瀬ちん、赤ちんが呼んでたよ」
「まじで!? ごめん有栖ちゃん、ちょっと待っててもらっていい? すぐ戻ってくるから!」
「は? えっ、ちょっと!!」
黄瀬は「やばいやばい!」と叫びながら、急いで体育館へと走り去る。置き去りにされた私は、敦君を見つめた。