第3章 夕陽が沈む頃
「……有栖ちゃんだけ、特別に俺のこと涼太って呼んでもいいっスよ」
「やだよ。黄瀬」
「呼び方が荒くなった!!?」
「君って人をイラッとさせる天才なんじゃない?」
「ええっ!? 褒めても何も出ないっスよ」
「褒めてないんだなぁ! これがっ!!」
わかった、この人面倒くさい人だ。
ふっと、彼が笑う。驚いた、あまりにも……綺麗に笑うから。
「有栖ちゃん、可愛い。驚いた顔、結構好きかも」
「煩いよ、君」
「ふふっ、にやにやしちゃう」
「へんたーい、くたばれー」
「いーやーでーすー」
「黄瀬うっざ」
「なんか酷くない!?」
この距離から離れたくて、身体を起こした。夕陽は沈みかけて、薄暗くなり始めている。そろそろ帰らなくては……。
「もう帰るんスか?」
「うん、外暗くなってきたし」
「送るっス!!」
「え――……やだよ、他の女の子に見つかったら、面倒くさそうだし」
「あ、でも俺一度バスケ部に寄って荷物取りに行かなきゃ」
「……バスケ部なの?」
「そうっスよ! えっへん」
なんだかバスケ部の人と、何かと縁があるような気がしてきた。