第2章 幼馴染の彼と私
チャイムが鳴ると同時に、私は教室を飛び出した。私の背後から迫る、複数の生徒の足音。次から次へとその足音は増え、その誰もが目指すは……購買だ。
「おばちゃん! 焼きそばパン二つと、あんぱん一つ! 絶対こしあんね!」
「はいはい。今日も南雲ちゃんは早いね」
「唯一、足が速いことだけが自慢なんで」
おばちゃんからパンを受け取ると、人混みの中をかき分け離れようとするが、思いのほか周りの圧力が強すぎて、なかなかこの輪の中から出ることは出来ない。
「(このままだと黒子に後で何を言われるか!!)」
「有栖」
「っ!!?」
名前を呼ばれた? 同時に、強い力で腕を引っ張られいとも簡単に輪の中から抜け出すことが出来た。
「征十郎……?」
まさか、助けてくれたのが彼だとは思わなかったけど。
「何を遊んでいるんだ?」
「あ、遊んでないよ! 思ってたより購買戦争が凄まじくて……出られなかったんだよ。もう、何笑ってんの」
「いや、相変わらず小さいせいだろうなと思って」
「馬鹿にしてるなっ!? 牛乳さえ飲めば、高校生までには身長伸びるもん!」
「知ってた? 女子は小学生の頃にぐんと伸びて、中学生頃には止まるらしい。高校で成長する例は男子くらいらしいぞ」
「……征十郎の意地悪」
そんな希望も何も消え去るようなこと、言わなくてもいいのに……。小さく肩を落としていると、頭にこつりと紙パックの感触がした。