第16章 相合傘
「有栖ちんって、めんどくさい」
「……うん」
「でも、言わないで、もう」
「ごめん……」
「違う、わかってないでしょ? 何を言わないでって言ってるのか」
「ん?」
ふわりと、抱きしめられた。
「嫌いなんて、言わないで。聞きたくない」
「敦君……?」
「好き、だから……言わないで」
「え……?」
「好き、有栖ちんが……好き」
彼の鼓動が聞こえる、高鳴っていく音に私まで緊張が移っていく。
嘘、だって……私、敦君に嫌われるようなこと……ばっかり。
「嫌いって言われて、わけがわかんなくなった。嫌だって……思った。やだ、俺はやだっ! 有栖ちんが俺を嫌いとか無理! 無理だから……っ」
どうしてだろう。どうして、なんだろう。涙交じりの声が聞こえる。苦しい、このままぎゅっと抱きしめても……いいの?
「有栖ちんの言ってることは、むかつくことばっかだった。でも別に、本気で気にしたりとか、ないし。謝らなくていいし……! だから俺のこと嫌いにならないでっ!!」
「っ……!」
彼の大きな背中に、腕を回す。めいいっぱい、ぎゅっと。