第16章 相合傘
「ごめん。嫌いじゃないよ、大丈夫……だよ」
私のどんな言葉より、嫌いというただ一言に傷付いて……心なしか震えてる気がする。私だって、同じだよ。
「私も、敦君に嫌われたかもって思って……凄く嫌だって思った。このまま、もう離さなくなっちゃうのかなって嫌になって……ごめん」
「嫌うわけないしっ!! 確かにイラついたけど、別にそれだけだし」
「そっか……よかった」
安堵して、笑みが自然と零れた。なんだ、私のただの思い違いだったんだね。よかった。
「そういえば、どうしてここに来ようと思ったの?」
顔を上げれば、敦君はちょっとだけ恥ずかしそうに答えた。
「……嫌いにならないでって、言わなくちゃって思ったから……」
「……ぷっ」
「はあ!? なんで笑ってんの!?」
「ご、ごめ……っ。ふふ、可愛いなって思って」
「はあ? まじないわー。有栖ちんひっどぉ」
拗ねるように頬を膨らませるところも可愛い。
私が笑顔で彼を見つめると、敦君は「馬鹿」って一言だけ呟いて、抱きしめる力を強めた。優しい腕に抱かれて、さっきまでの喧嘩が嘘みたい。