第16章 相合傘
「……敦君と喧嘩した」
「はあ? 紫原と? どうやって」
どうやって……。何となく言いずらい気もしたけど、素直に先程の出来事を青峰に話した。そしたら「へぇ」とわりと薄い反応が返ってきた。
それもそっか、元々いるはずの青峰は珍しくおさぼりでいないんだもんね。
「そういう青峰はどうしてこんなところでサボってるの」
「別に何でもいいだろ。お前に関係ないし」
「……それもそうだね」
先程の敦君と同じ言葉に、もう追及する言葉さえ出てこない。寂しい。もっとちゃんと、皆こと見ていたらよかったのかな。もっと早く、マネージャーになってたら少しはこうならないで済んだかな?
「お前、落ち込みすぎ。調子狂うわ」
ぽんぽん、と頭を叩かれる。仕方ないじゃん、本当にショックなんだから。
「私、本当に敦君のこと何も知らないんだなって思った」
「どうしてそう思う?」
「……彼がどうしてバスケしてるのとか、ちゃんと知らなかったし……どんな気持ちでやってるのかも知らないんだもん。なのに、外野がごちゃごちゃ言って……そりゃうざいに決まってるよね」
それでも口を出したのは、たぶん敦君だったから。そのままにしておけないって、勝手に思ってしまった。
「ほっぺ、叩いちゃった」
「え? まじで? やるじゃねぇか」
「何褒めてるの……全然嬉しくない」
「それで紫原はぶちキレなわけか。見たかったわ」
「別に見なくていい! しかも、大嫌いって言っちゃった」
「……大喧嘩じゃねぇか」
青峰がそう言うんだから、きっとそうなんだと思う。