第15章 それぞれの痛み
「はあ、もう練習やーめた」
「敦君……?」
突然、敦君がめんどくさそうに練習を放棄して、真っ先に私の方へとやってきた。
「俺休憩ね」
「敦君、ちょっと……勝手にいいの?」
「いいのいいの」
「おい。紫原」
流石の征十郎も、聞き捨てならないとばかりに睨みを利かせて、こちらへやってきた。こういうことはよくあることなのだろうか? それにしても、征十郎の態度は明らかに怒っているように見える。
「なぁに? 赤ちん」
「練習をやめるとはどういうことだ。俺は許可した覚えはないぞ」
「だってさ……俺達って練習する意味あんの?」
「なんだと……?」
「別に練習しようが練習しまいが、どんな相手にも勝てちゃうんだし。練習する必要ないじゃん? 峰ちんだけ練習出てないなんて、ずるくない? 俺だってやりたくないし」
「え……」
思わず声が出た。その言葉で、辺りを見回すけれど確かに青峰の姿はない。一体、彼らに何があったというの?
「バスケなんて、ただの遊びじゃん。ゲームと何が違うわけ? 本気になるとかあほらし」
私の中で、血液が沸騰するのがわかった。そんなことあるんだって初めて知った。目の前がかっと熱くて、嫌に心臓の鼓動が激しくて、私は自分の行いをしっかりと自覚する。
バシッ!!
私の小さな手は、敦君の右頬を力強く打った。
「!? 有栖……?」
驚愕している征十郎が私の名を呼んだけど、関係ない。そんなこと、関係ない。