第14章 彼と私の終着点
「次は普通のお弁当が食べたいな」
「征十郎って料理出来たよね? 自分で作って持っていけばいいじゃん」
「わかっていないな……女の子に作ってもらうから価値があるんだよ」
「じゃあ、学校の可愛い子をはべらかして作ってもらうのは?」
「有栖……俺は黄瀬じゃないんだよ? そんなことをしてどうする」
「でもきっと、征十郎ならモテるし出来ると思うけど」
「……有栖でなくては、意味がない」
手が止まる。けれど彼の視線はこちらにないまま、空を仰いで「いい天気でよかったな」とだけ呟く。征十郎と過ごす時間は、懐かしいようで新しい。話を逸らすように、違う話題を彼に振った。
「征十郎はどうしてバスケ部に入ろうと思ったの?」
「どういう意味だ?」
「だって、征十郎は昔からなんでも平均以上出来たし、バスケでなくてもよかったんじゃないの?」
「……そうかもしれないな。でも、俺はバスケがいいよ」
「理由を聞いてもいい?」
「あいつらが、いるからな」
あいつらとは、バスケ部の彼らを指しているのだろう。征十郎にとって、バスケを選ぶだけの大切な仲間ということなのかもしれない。いつも征十郎は人に囲まれていたけど、何処か孤独な気がしていた。それはたぶん、本当の意味で彼の傍にいたわけじゃないからなのかもしれない。
上辺だけの関係、上辺だけの友達。それでも征十郎がそれを嫌だと言ったことはなかったように思う。その理由を、未だに知らないけれど。
「好きなんだね、征十郎は。バスケ部の皆が」
「……そう、かもしれない」