第14章 彼と私の終着点
「有栖?」
「ん? 何?」
「……楽しいか?」
「うん、楽しいよ。メリーゴーランドも馬鹿に出来ないよね」
「そうだな……君が楽しいなら、よかった」
縮まった距離は、次にどんな彼を見せてくれるのだろうか。
「よし、次はコーヒーカップだな。あそこまで競争だ、有栖」
「えっ!!? ちょっ、合図もなしに走り出すなんてずるい!!」
はしゃぐ彼を見るのは初めてかもしれない。いつも大人びた顔を見せる彼は、常に中学生とは思えないオーラを纏っているから。でもこうしていると、本当に中学生なんだなって思えて、こっちのがいい気がする。
もっと征十郎には、子供っぽく在ってほしい。
コーヒーカップ、お化け屋敷、一通り回りつくした私達は、お腹が減ったことに気付きベンチに向かった。そこにお弁当を広げると、征十郎がサンドイッチを掴んで小さく「頂きます」と言って口に入れた。
「どう?」
「ん――……マヨネーズ、足りないな」
「嘘!?」
「……ふっ、嘘」
「な、なんだ……びっくりさせないでよ」
「そんなに驚くとは思わなくてな。有栖も食べてみたらどうだ? 美味しいよ」
「……うん」
”美味しい”
そう言われて、嬉しくないわけがない。無意識ににやけてしまう顔を押さえつけるように、私もサンドイッチを食べ始める。サンドイッチならさらっと食べれてしまうし、やっぱりこっちにしたのは正解。