Do not look back behind【進撃の巨人】
第1章 強く握られた拳
「ほらまた謝ってる。配達行ってくるから、今日もみんなをよろしくね。」
ハンナはそう言って家をあとにした。
「…本当に君に伝えたいのは、ごめんでもお礼でもないんだけどな…。16年も一緒なのにたった2文字が言えないなんてね。」
カイはそう呟くと自嘲気味に笑っていた。
ハンナはいつもの道を急いでいた。さすがに8年もやっていると仕事に慣れた。
地図は見なくても道や住居の位置は全て把握している。
あれから5年…。
院にいる子どもは増える一方で本当にギリギリの生活だ。
私がかんばらなくちゃ。
私がみんなを支えるんだ。
…あの女には頼れない。
いや、頼っちゃいけない。
私だけが知っている。
だから私だけで止めておくんだ。
みんなを苦しませてはいけない。
これ以上不安にはさせたくない。
これは、私のわがまま。