Do not look back behind【進撃の巨人】
第1章 強く握られた拳
私はここでは長女として家のことを全てしている。
もちろん誰とも血縁は無く、ただ年が1番上というだけだ。
あの女は何もしない。
郵便の仕事だって私達に任せきり。昼頃起きて来て、金を数えて寝るような奴だ。
ここでは6歳から簡単な仕事から始め、院に金を納める。
配達は10歳から。
もちろん私もそうやって12年間孤児院に尽くしてきた。
それが当たり前になっている現実。
力の無い私達は
そうしないと生きていけない。
壁の中のさらに閉鎖された壁の中。
それが私達の世界だ。
幼い子達が用意された朝食を食べるのを見届けながら、自分は着替えを進める。
郵便員である証のバッチも左胸で光る。
使い古した布の掛けカバンに手紙を詰めていく。
「みんな、そろそろ行こう。」
ドアを開けようとしたら、後ろから声をかけられた。
「ハンナ、ごめんね。」
振り返ると自分とあまり年のかわらないほどの青年が廊下を這って出てきた。
「カイ…謝られるくらいならお礼のほうがいいっていつも言ってるでしょ。」
「ごめん…。」
悲しそうに笑う青年。
カイは私より一つ下でここの長男にあたる。しかし巨人に片足を奪われ移動が自由に出来ないため、私が仕事の間幼い子達の面倒を見てもらっている。
私は小さく溜息をつく。
カイは優しい。
いつも誰かを優先しすぎて、自分はどんなに傷ついていても気づかないようなやつだ。
だから私に任せることが心苦しいのだろう。
いつも一人布団の中で泣いているようだが、これを言うと赤面になりふててしまうので秘密にしている。
カイはそういうやつだ。