Do not look back behind【進撃の巨人】
第2章 自分の足で
「ハンナ…あのね…」
「…今から謝ったらただじゃおかない。」
「…違うんだ。聞いて?」
いつもと違う真剣な顔。
今じゃなきゃダメだから。
そう言って手招され、カイの口元に耳を近づける。
「ハンナ…大好き。」
指で顔を正面に向けられたと気づいた瞬間、唇に当たる温もり。
長く綺麗なまつげがこんなにも近づいたのは初めてだった。
途端に顔は赤くなり頭から湯気が出る。
「っ、バカっ!!いきなり…」
もう一度カイを見ると、肩で息をしており、自分の足元まで紅が流れていることに気がついた。
「…ハァ、あのね…。」
「もう喋るなバカ!」
視界が滲む。
「…いってきます。今までありがとう。」
幸せそうに微笑むカイ。
「行くな!あたしを置いて行くなよ!」
力が抜けたように、ハンナの手から滑り落ちる腕。
あぁ、見送る側ってこんな気持ちなんだなって。
私はいつもこんな気持ちをカイにさせてたんだって。
枯れていたはずの涙は静かに落ちる。