Do not look back behind【進撃の巨人】
第2章 自分の足で
誰も助けてなんかくれない。
フッとハンナの中でその言葉が浮かぶと、それは頭の中を埋め尽くしていく。
どこぞの絵本のように、王子様が現れるわけでもない。
友達が助けてくれる?
私にはそんな友達居ないじゃないか。
ハンナの横を駆け抜ける人達。
手紙を渡すと微笑んでくれるおばさんも、道で挨拶を交わすおじさんも。みんなハンナが見えていないかの様に逃げていく。
子どもが転ぶと、振り返って抱きかかえる母親。
親なんて私には生まれた時から居なかった。お母さんって呼んでも、振り返ってくれる人なんて居なかった。
…私には、何もない。
空っぽじゃないか。
耳を塞いでいた手をおろすと、何かに手が当たる。
パンや野菜が入った紙袋。
そうだ、私にはカイがいる。
みんながいるじゃないか。
私を必要としてくれる人達。
帰らなきゃ。
みんなが…待ってる…。
迫り来る手を必死にかわし、走りだした。