Do not look back behind【進撃の巨人】
第2章 自分の足で
しつこいヤツだな。
そう言って彼が笑ったことが嬉しくて、私も口元が緩んでしまう。
「わかった。なら俺もここで待っていてやる。」
必ず明日会う。
そう小さな約束をして別れる。
彼の背中で羽ばたく翼が表す意味を知らない訳じゃない。
一般人である自分ができることなんて何もないことも。
自分だけ名乗って彼の名前を聞いていなかったことを明日会えるという言い訳にして、その場を離れた。
今日は手紙の数が多く、配達が終わるとすでに昼をかなり過ぎていた。
途中、どこからか歓声が聞こえた。きっと自殺志願者集団が出立したのだろう。
そう考えると、今朝の彼の笑顔が思い浮かぶ。
私が偏った見方をしていたのは、彼のことだけだろうか。
自分を悲劇の主人公に仕立て上げて、周りを遠ざけてさしまっているのかもしれない。
無性に淋しさが込み上げてくる。
「すいません、手紙です。」
貼り付けた仮面を外して彼を思い笑ってみると、世界がキラキラして見えた。