Do not look back behind【進撃の巨人】
第1章 強く握られた拳
居間に戻ると部屋は片付いており、子ども達は何も無かったかのように過ごしていた。
破れたカーテンを女の子が縫い、年が上の子は下の子の手当てをしている。
ハンナは自分達のこの状況が悔しくなり、拳に力が入る。
向こうではシャワーの流れる音がする。
ふと裾を引かれて視線を下げると、俯いたままの妹の姿。
「おねえちゃん、、お腹空いちゃった。」
アザのある痛々しい笑顔に、心がギュッと締め付けられる。
「うん……準備しようね。」
ハンナは上着を脱ぎ自分のエプロンを身につけ、台所へ立つ。
今まであの女から何度逃げだそうと考えたかわからない。何度殺してやろうと思ったかわからない。
だがそれをしてしまうと、足の不自由なカイはどうするのか。幼い子ども達はどう暮らしていくのかと思うと行動に移せずにいた。
この大人数では住むところもお金も無い。街の人達はゲルダを子どもを救った女神のように考えており、私達の言葉を信じてはくれないだろう。
結局私はあの人がいないと生きていけないのだろうか。
そう思うと涙が滲んだ。
生かさせてもらっている今を受け入れて、地獄に耐えていくしか私達に選択の余地はないのだろうか。