Do not look back behind【進撃の巨人】
第1章 強く握られた拳
「キサマッ!!」
ハンナは力任せにゲルダの胸ぐらを掴み睨みつける。
「みんなに…カイに何をした!!」
震え続ける細い背中を横目に、ゲルダは両手でハンナの頬を撫でる。
「ハンナ?何を怒っているの?私は子ども達を親としてしつけただけよ。お母さんのいう事を聞かない子には罰を与えないとでしょ。」
「しつけ…?あんなに酷いことしておいて、よくもまあそんなことが言え…」
ゲルダに近づいたことで、先ほどよりもゲルダの背後に横たわるカイがより見えて言葉を失った。
紅い小さな斑点は背中に無数に広がり、シーツに散った白濁とした液体。
「…カイとは少し遊んでいただけよ。足が無くても育つところは育ってたいからね。親子のスキンシップにあなたが口を挟むことはないわ。なんならあなたもカイと楽しめばいいじゃない。夜にあなた達が何をしようと私の知ったことではないわ。」
ゲルダは横目にカイを見ると、再び本に視線を戻しながら鼻で笑った。
「このっ…!!」
ハンナが握った右手を振り上げたとき、細い腕に掴まれた。
「カイ……」
ゆっくりと振り上げた腕を降ろす。
シーツにくるまってはいるが腕の痛々しい傷が目立つ。
「ハンナ…ありがとう。みんなのところに行こう。」
今朝と変わらない悲しそうに笑うカイに何も言えなかった。