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Do not look back behind【進撃の巨人】

第1章 強く握られた拳




夕方、今度は配達依頼を受けるために街をまわる。
帰宅途中、見上げるとまだ少し赤が残る空には早くも星が輝いていた。

壁に囲まれたこの街も壁外と同じ空を共有していることが、自分を一瞬すべてを忘れさせて自由にする気がした。


今日あったことが深く胸に突き刺さる。カイは普段から暴力を受けていたのだろうか…。
いつものあの笑顔の下に無数の傷があったと思うときづけなかった自分が情けなくなる。なんて汚い女なんだろう。
親がいない。ただそれだけで私達はこうも苦しまなければならないのだろうか。
明日に夢も希望も持てない真っ暗な日々には慣れていたはずなのに今さら悲しくなる。





あの日。雪の降るあの日、あの人に拾われなければ、私の人生は違うものになっていたのか。いや、凍えて死んでいたのだろうか。

あの日。巨人が壁を破らなかったらみんなは今も幸せに家族と暮らせていたのか。いや、あのことが無ければ私は兄弟達に会えなかった。






ありもしないifを考え、幸せに暮らす自分を想像しながら家路についた。
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