Do not look back behind【進撃の巨人】
第1章 強く握られた拳
「おい…てめえ。俺には散々文句言っといてコイツにはすんなり渡すのか。」
後ろから聞こえた唸るような低い声に身震いをする。
「何をそんなにイライラしているんだ。ハンナと何かあったのか?」
リヴァイはエルヴィンの話しを無視してハンナに近づいていく。
「…、なにか?」
漂うオーラが恐くないといえば嘘にはなるが、こちらだってプライドくらいある。
黒髪なら彼は、鼻がつくのではと思うくらいにわたしに近づくと、突然胸ぐらを掴まれてそのまま足が地に付かなくなった。
「ッ…!」
「てめえ…、分かって言ってんだろ。」
何のことかさっぱりわからないが、彼がかなり怒っていることは理解できた。
しかしどんどん息が苦しくなり視界がぼやけていく。
「やめなさい。」
エルヴィンさんの冷静な声が聞こえるが、すでに涙が浮かび声がでない。
「彼女は我々のことを知らない。調査が近い中、今騒動を起こすことの意味はわかるな?」
「………チッ」
急に手を離され尻もちをつく。
ゴホッゴホッ…ッ…
やっと喉が解放され咳き込んでいるとそっと手をさしだされた。
顔を上げるとエルヴィンさんが申し訳なさそうに眉を下げている。
「大丈夫かい?悪いことをした。手紙をありがとうハンナ。まだ配達の途中だろう。今日はもう行きなさい。」
そう言われ涙を浮かべたままリヴァイを睨みつけると、逃げるようにもと来た道を走った。