Do not look back behind【進撃の巨人】
第1章 強く握られた拳
目の前で片手を出したまま不服そうにこちらを睨みつけている兵士。
見た感じ私と身長があまり変わらないような気もするが…。
顔だけ恐いこんなやつが巨人と戦えるのか、なんて考えつつ溜息をつくと、家で弟達にするように腕を組む。
「あの、班長以上の方でないと手紙を渡せない決まりになってるんです。だからあなたには渡せません。…どこの誰だか知りませんが、その無愛想な感じもやめたほうがいいですよ。あなたも今私に同じようにされたら嫌だと思うでしょう。」
日頃の鬱憤までも出しきり大きく溜息をつく。
話しをしている間、相手は大きく目を開いて立ったまま動かなかったが言いすぎただろうか…。
頭の中に謝罪の言葉を並べていると後ろから名前を呼ばれた。
「おはようハンナ。どうかしたのかい?」
「エルヴィンさん!」
金髪の彼はエルヴィンさん。
以前に手紙を届けて貰ったことがある。自分は班長よりは上だよとしか言われなかったため、彼の本当の役職は知らない。
でも彼の風格や凛とした佇まいから自然と腕が動き、手紙を渡してしまったのだ。
それ以来顔を合わせると会釈ぐらいはする関係になっていた。
「君がそんなに楽しそうにしているのを見るのは初めてだな。何かあったのか?」
「……別に楽しそうになんてしてませんよ。手紙、またお願いします。」
そう言ってエルヴィンさんに調査兵団宛ての手紙の束を渡す。
彼は並ぶと見上げるほど背が高い。いつも自分よりも幼い子と接しているせいか、自分が見下ろされることが少し恥ずかしい。
目を合わせづらくなって遠慮がちに下を向く。