第1章 ホタル ※
質問の内容に、頭を殴られたような衝撃を覚える。
ハンジの性別については、新兵の間で論争になっていたのは事実。
しかし、リヴァイやミケを始め、上官のほとんどはハンジを男のように扱っている。
男性だとばかり思っていたが、女性という可能性もゼロではないんだ。
でも・・・
なぜ、そんなことを聞くのだろう。
「分隊長・・・その質問に対する答えに、“正解”はあるのでしょうか?」
ハヅキは、自分の手を取っているハンジを見つめた。
「貴方を傷付けずに済む答えがあるなら、私は必死でそれを探します」
だから、どうか時間をください。
とても悲しそうな顔をしている貴方をこれ以上傷つけない方法・・・
必ず見つけます。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ハヅキの手が熱い。
それは、いじらしいほどに・・・
ハンジはたまらなくなって、自分より一回り小さいその体を抱きしめた。
「ハヅキ・・・意地悪な質問をしてしまってごめんね」
やはり、隠しておけない。
「今の質問には、正解が無いんだ」
生まれてこのかた、ずっと隠してきた秘密。
それを明かせば、私がなぜここまで巨人に入れ込むのか、きっと分かるだろう。
「ハヅキ、君だけに見せよう。私の体を・・・」
誰もいない、泉のほとり。
差し込む月の光と、ホタルの火だけが二人を照らす。
ハンジはギプスを外すと、胸元のシャツのボタンを外した。
シュルッと衣擦れの音がして、草むらの上に衣服が落ちる。
上半身が露わになったハンジを見たハヅキの瞳が大きく開いた。
「・・・がっかりした?」
自嘲気味に笑うハンジ・・・
その胸には、乳房があった。
「女性・・・だったんですね・・・」
すると、儚い顔をした分隊長は首を横に振る。
そして、今度はベルトに手をかけ、ズボンを下に落とした。
「あっ・・・」
思わずハヅキの口から声が漏れる。
ハンジの臍から下、股間には男性特有のものがあった。
「見ての通り、私は男でもあり・・・女でもある」
乳房も、ペニスも、子宮もある。
「同時に私は男でも、女でもない」
卵巣も、精巣もない。
つまり、生殖機能がない。
両性具有の者によく見られる悲劇だ。