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【R18】夏だ!花火だ!夏祭りだ!

第1章 ホタル ※





午後10時。

兵舎の外にはまったく人影が無かった。
訓練場には明かりが付いていたから、リヴァイが鍛錬をしているのかもしれない。

ハヅキとふたり、砂利道を歩く。

頭上には満点の星空が広がっていた。


「夜になると、少しは涼しくなりますね」


いつになく黙り込むハンジを気遣ってか、ハヅキが明るい声を出した。
しかし、分隊長は軽く相槌した程度で、再び口を閉ざしてしまう。

いつもなら他愛のない話を延々としているのに・・・


「・・・・・・・・・」

やはり、気持ちを伝えるべきでは無かったか。
いつ死んでも良いよう、自分の想いを知っておいて欲しいなんて、自分勝手な考えだった。

「あの、分隊長・・・」

謝ろうとした、その時。


「ハヅキ」

ハンジは小さな泉の前で足を止めると、澄んだ水面を指差した。

「あそこを見て」

そこには、点滅する無数の光。
ユラユラと宙を浮いている。

「ホタル」

その柔らかで儚い火に、ハヅキは微笑む。
しかし、ハンジは自らの宿命を重ね、つらそうに眉根を寄せた。

ここなら誰もこない。
真実を、話さなくては・・・

だけど・・・怖い。

ハヅキ・・・どうして私を好きになんてなったの。
部下としてそばに居てくれれば良かった。
それ以上は望まなかったのに・・・


「分隊長」

不意にハヅキの手が、髪に触れた。

「ホタルが分隊長の髪に止まってます。とてもきれい」

「・・・ハヅキ、ごめんね」

「え?」

柔らかな手を取り、口元に持っていく。
そして、そっと甲にキスをした。


ハヅキの心臓がドキリと鳴る。
鼻筋が通り、聡明な目をしているハンジは、まさに秀麗という言葉が相応しい。

でも今は、とても儚くて暗闇の中に消えてしまいそうだった。



「ハヅキに聞きたい」


夏の夜風がふたりを撫でる。


「私を男性だと思って、好きだと言ってくれているの?」


「え・・・?」

それは、予想もしていなかった質問だった。
一瞬、からかっているのかとも思ったが、ハンジの目がそうでないことを物語っている。


「それとも、同性愛・・・つまり、私を女性だと思って好きだと言ってくれたの?」


「・・・・・・・・・」





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