第4章 夏祭り ※
「だから・・・わっちと旦那様がいい事をしている時も見張っていたのでありんすね」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「わっちがこの胸元に小刀を忍ばせて、旦那様を殺さないように」
白い手が誘うようにリヴァイの太ももを撫でる。
それを合図に、それまで三味線を引いていた女郎や、手伝いをしていた新造が席を外した。
何度も顔を合わせているものの、客としては初めてのリヴァイ。
花魁とあろうものが、初夜にして体を開いて良いものではない。
しかし、体の芯が疼いてしかたがなかった。
「ハヅキ」
初めて名前を呼ばれ、心臓が大きく脈打つ。
布団ではなく、ここで押し倒されるのも悪くない、そう思った。
「あい」
顎を掴まれて上を向かせられると、唇を重ねられた。
そして、酒が口移しで流れ込んでくる。
「んん・・・」
ゴクリと喉が鳴る。
ああ、熱い・・・
酒を飲むのは、いつ以来だろうか・・・
口元から酒が零れ、それでもリヴァイと唇と重ね合ったまま。
不思議と幸せな気持ちが湧き上がった。
「もっと飲むか・・・?」
「お前さんの口移しでなら」
花魁は、宴の席で飲食を一切しない。
美しい姿を見せて客を悦ばすのが仕事だからだ。
しかし、いまハヅキはその役目を忘れ、まるで餌を待つ雛のように酒を欲した。
リヴァイの唾液が混じった酒。
至極の美酒のように思える。
リヴァイはすっかり酔いが回ったハヅキを抱きしめ、簪を避けながらその髪にキスをした。
隣の部屋では、もう夜の営みが始まっているのか。
微かに喘ぎ声が聞こえる。
「ハヅキ・・・」
暴走しそうな気持ちを抑えながらその体を抱き上げ、布団まで運んだ。
そしてそっと寝かせる。
「帯を・・・」
仰向けになりながら、ハヅキは帯を外してくれるようリヴァイに懇願した。
言うとおりにすると、今が満開とばかりの瑞々しい女の体が露わになる。
「お好きにしなんせ」
しかし、リヴァイはその体を隠すように布団を掛けた。