第1章 ホタル ※
風車とは、東洋人に伝わるおもちゃのひとつだという。
憲兵団の資料室にあったものを、無理言ってもらってきたものだ。
何故か心惹かれたし、リヴァイも興味深そうに指で羽を回していた。
しかしハヅキはそれに目もくれず、じっとハンジを見つめる。
「貴方を好きだという気持ちを伝えるまでは、死にたくないと思いました」
これで、3度目。
もう逃げることはできない。
「あのね・・・本気で言っているの? 私はハヅキの直属の上司なんだよ」
「尊敬する上官に、こんな冗談をつくとお思いですか?」
切なげな笑顔を見せるハヅキに、胸を締め付けられる。
・・・ああ、まったくもう。
ハンジは溜め息を吐いた。
「ハヅキからだけは・・・その言葉を聞きたくなかったよ」
ハヅキ以上に、ハンジは切なげな顔をしていた。
「もう、どうあっても元の関係には戻れなくなるじゃない」
部下に告白されるのは、初めてじゃない。
今まではうまく断ったり、はぐらかしたりすることができた。
それは、彼女や彼らに対して、特別な感情を抱いていなかったから。
というか“普通に”大事な部下という存在だったから。
でも、ハヅキ・・・
君は・・・残念ながら、違う。
私は君を特別な目で見てしまう。
“誰よりも”大事な部下だ。
自分の真実を明かして傷付けたくないし、自分も傷付きたくない。
でもハヅキは一線を越えようとしている。
本当の自分を知らずに・・・
「分隊長・・・私は、分隊長が望むのなら、今まで通り接することができます。ただ、この気持ちは伝えておきたかった」
次の壁外調査で、命を落とすかもしれないから・・・
「・・・・・・・・・」
“ごめんなさい”と謝るハヅキ。
このままはぐらかすには、あまりにも真剣すぎるその目に、ハンジは絶望を覚えながら立ち上がった。
「ハヅキ、少し外を歩かない?」