第3章 花火 ※
数カ月後。
季節は大きく変わった。
カモメが鳴く。
いま、海軍本部のあるマリンフォードは世界を震撼させる事件がまさに起こっている最中だった。
島中の電伝虫が、その様子を中継している。
「お前の父は!!! “海賊王”ゴールド・ロジャーだ!!!!」
世紀の大悪党、大海賊時代の父祖となった男の血筋が存在していたとは。
それが、心から愛した男だったとは。
ザザーン・・・
ザザーン・・・
初めて彼と出会った海岸。
世間はマリンフォードの行く末に気をとられているが、ハヅキはそこに立ち、海を見つめていた。
手にはいまにも消えようとしている、ビブルカード。
だけどまだ・・・ 生きている。
あなたは言っていた。
あなたの弟は、必ずこの島にも名前を轟かせると。
それは本当だったわね。
彼方から吹く風が波を作る。
波打ち際に、手のひら程度の大きさの小瓶が流れついているのが見えた。
拾いあげると、中に小さな紙が入っている。
どうやらメッセージのようなものが書かれていたようだが、長い間波に揺られていたせいか、滲んでしまって読めなかった。
しかし、きっと深い愛情が込められているのだろう。
何故か温かさを感じた、その時。
「白ひげが死んだ!!!!」
興奮気味の叫び声が、あちこちから湧き上がる。
ああ、時代のひとつが終わった。
ハヅキはそっと右手でビブルカードを握りしめ、下腹部に触れた。
エース・・・あなたは自分の血を残したくないと言った。
ゴールド・ロジャーの血を残したくない、と。
でも、私は違う。
ポートガス・D・エース、“あなた”の血を残したい。