第3章 花火 ※
この静かな島にこんな喧騒が響くのは、いまだかつてあっただろうか。
まさか、あなたの弟が海軍本部を攻め落とそうとは・・・
ハヅキは天を仰いだ。
「エース・・・聞こえる? 私はいつか海に出るわ」
手の中のビブルカード。
遠く、届くはずもないあなたに、“鼓動”を伝えるために。
「“海賊王”に会って、あなたの家族を紹介するのよ」
海賊王の兄の血を引く、この“子”を。
下腹には、命の膨らみ。
紛れもない、あの夜に愛し合った結晶が宿っている。
もし男の子なら・・・
エース。
そう名付けよう。
あなたの子は、きっと誇りに思ってくれる。
その瞬間、空に大きく花火が開いた。
それは、あの夜にエースが見せてくれた大輪の華と同じ。
“ 愛してくれて・・・・・・ありがとう!!!! ”
エースの声が聞こえた気がした。
その瞬間、手の中のビブルカードは灰となった。
「ああ・・・」
涙が溢れる。
「エース・・・あなたは私との約束を何一つ破らなかった」
食事を与えた私を、殺しはしなかった。
家に泊めた私を、犯しはしなかった。
そして・・・
私を抱いて、このお腹に命を残してくれた。
もう私はひとりじゃない。
「エース・・・愛してくれてありがとう。そして、これからも愛してる・・・ずっと」
灰になったビブルカードを、拾った小瓶に入れる。
そして、そっとキスをした。
目の前に広がる海は穏やかに。
「お前なら大丈夫だ、良い母親になれる。まあ、おれのガキだ、コイツにゃ手ェ焼くだろうが・・・」
よろしく頼むよ・・・・・・・・・
どこからか、そんな声が聞こえてくるようだった。
不敵な笑みとともに・・・
第3章 『 花火 』 Fin.