第3章 花火 ※
「いいのか?」
エースは少し驚いた顔をしながら、ハヅキの腰を抱き寄せた。
「今更いやだと言っても、もう逃がさねぇぞ」
「少しでもいやだったら、最初から海軍に捕まるのを覚悟で賞金首を家に泊めたりしない」
最初にストライダーで入り江に現れた時から、自由で物怖じしないあなたに惹かれた。
屈託の無い笑顔を見ているうちに、殺されてもいいからあなたに食事を振る舞いたいと思った。
夜、ベッドに眠る自分を見つめながら指一本触れてこないあなたに、女性として求められたかった。
そして・・・
最後はひとりになることが分かっていても・・・
「あなたを愛してる、エース」
あなたを愛している人間は海の上だけでないことを、どうか覚えていて。
その言葉がエースにとってどのような意味を持っていたのかは分からない。
ほんの一瞬、泣きそうな顔になったが、すぐにいつもの笑顔に戻ると、ハヅキを軽々と抱き上げた。
「今すぐ帰って、ヤろうぜ」
「・・・自分で歩ける」
「いや・・・このまま、抱いて帰りたい。もう一瞬でも時間が惜しい、お前に触れていてェ」
この8月10日が終わり、朝が来るまで。
少しでもお互いの体に、愛し合った証を残そう。
この夜。
生まれて初めて、男の体を受け入れた。
痛みはあったが、それよりも愛されているという事実が快感を与えてくれた。