第2章 海
「期待を裏切らない可愛さだけど・・・牧さん、本当にいいんですかね・・・イヤ、ホント可愛いけど」
「そんなに可愛いと思うなら、信長が付き合ってみれば?」
「そんな恐ろしいこと、できるわけないでしょ! 意地悪言わないでくださいよ、神さん!」
「あははは」
本当に芸能人ばりに可愛い子だ。
バスケの事を何も知らない人間が見れば、二人はお似合いのカップルだろう。
しかし、清田達にしてみれば、牧とハヅキがどのようにして出会い、どのような経緯で付き合うことになったのか謎だった。
「神さん・・・」
まだハヅキに目を奪われながら、清田はポツリと呟く。
「なぜ、神奈川には“双璧”があったのか・・・いま、それが分かったような気がします」
珍しく神妙な顔をしている野猿に、神は微笑んだ。
「そうだね・・・」
彼女が何故、全国大会に応援に来なかったか分かる。
来られなかったんだ。
「なんだか少し・・・切ないっすね」
すると神は丸い目を、さらに丸くした。
「へぇ・・・信長でもそういう気持ちになるんだね」
「どういう意味っすか、ソレ!」
膨れる清田の隣で笑う。
しかしそんな神もまた、牧とハヅキを見て切なく思うひとりだった。