第2章 海
翌日、海南のメンバーは様々な表情で神奈川に戻ってきた。
最後の大会を終えて、晴々としている者。
いまだに悔しそうにしている者。
普段通りに戻っている者。
本当に様々だ。
「牧さん、牧さん!」
電車からホームに降りるなり、清田が牧にまとわりついてきた。
昨日は誰よりも早く寝たくせに、目の下には大きなクマを作っている。
「今から学校戻って練習しましょう! 時間がもったいねー!」
すると、神が宥めるように清田の肩を叩いた。
「信長、今日はだめだよ」
「何でっすか、神さん! オレ、悔しくて、体を動かさねーとおかしくなりそうっす!」
「気持ちは分かるけど、体を休めることも大事だからね」
「クッソー・・・」
そのやり取りに、思わず笑ってしまう。
清田にしてみれば、海南に入ってから初めて味わう敗北だ。
なかなか受け入れられないのだろう。
分からないでもない。
何故なら牧自身も、一夜明けたというのにまだ受け入れられずにいたからだ。
しかも、改札口に着くとさらにその思いは増す。
祝! 海南大付属高校・全国大会準優勝!!
そんな垂れ幕が駅にデカデカと掲げられていた。
「準優勝なのに“祝”か・・・オレ達が負けて帰ってきていることを忘れているのか」
隣にいた高砂がポツリと呟いた。
確かに、まるで傷口に塩を塗るような歓迎だ。
しかし、全国2位というのも快挙に違いない。
「顔を上げろ、高砂。堂々と帰るぞ」
残り僅かとなったキャプテンとしての勤め。
チームを奮い立たせ、出迎えてくれたたくさんの人に頭を下げる。
そして、顔を上げたその時。
「紳一!!」
甲高い声がしたかと思うと、ものすごい勢いでタックルされた。
・・・いや、タックルというより抱きつかれたのか。
しかも、コアラのようにしがみついてくるから肩にかけていたボストンバッグがずり下がった。
こんなことをするのは、世界でひとりしかいない。