第1章 夢中
「えー、嫌アル。私も揚羽と一緒にゴロゴロしたいネ。何で私と定春だけ寒い外に行かなきゃならないアルか?」
文句を言いながら、神楽は炬燵の中に体を深く埋めた。新八から言われた事など気にする様子も見せず、堂々と寝る準備に入る。炬燵から離れまいとする彼女の姿勢に、もちろん銀時も便乗した。
「俺も炬燵から出ねーぞ。夕飯なんてなァ、ミカンで十分なんだよ、ミカンで」
そう言いながら銀時は炬燵上のミカンをいくつか手に取り、皮を剥き始める。有言実行と言わんばかりに、銀時は皮の取れたミカンを次々と自分の口へと放り込んだ。隣の菊も巻き添えにする気なのか、剥けたミカンを時折、彼女の手に渡している。
そんな耳を貸す気のない上司とチャイナ娘に、新八は有無を言わさぬ雰囲気で彼らを見下ろした。
「…………銀さん、神楽ちゃん」
「ああ?」
「なにヨ?」
「一応、僕ら脅されてますからね」
初耳な情報に、一瞬だが万事屋に静けさが降りた。
脅されてる、とは一体なんなのか。訳の分からない発言に、銀時が再び疑問を投げかける。
「はあ? 脅しだァ? 誰に?」
「作者に」
即答で答えるや否や、新八はそのままスッと表情を消して神楽を見る。その際、彼のメガネが光に反射され、瞳の奥の感情さえも伺えない。「ふざけても良いけど、真面目な話はするから」と言うような雰囲気を醸し出し、単調なトーンで神楽に忠告をする。