第1章 夢中
「作者の方は『来年の冬まで先延ばししようかな……』だなんて失礼な事まで考えていたらしいわ。でもいくら遅筆とは言え、それは酷過ぎるって自主的に反省したそうよ」
「そうネ。だから結果的に、炬燵話が真夏に更新されたアル」
納得できるような、できないような……。理由を聞かされた新八は、尚もこの小説の問題点を挙げた。
「だからって、こんなのアリなんですか? 色々ツッコミ所が満載ですよ。大体、炬燵ネタ書くなら正々堂々、まともな炬燵ネタを書けば良いでしょうに。何でわざわざ『テコ入れ回』の会話文パクるんですか。ギャグも書いた事のない作者には荷が重すぎるでしょ。そもそも頼まれたのは『ほのぼの』じゃなかったんですか?」
「しゃーねーだろ、あの作者バカだから。『真夏に炬燵ネタはねーわw』とか自分で言ってた癖に、計画性がねーから冬に書かなかったツケが回ってんだよ。ギャグのノリでしか時期外れなネタが書けないんだよ」
耳をほじくりながら喋った銀時は「フッ」と指についた耳垢を吹き飛ばし、引き続きこの小説に対する不満を零す。
「唯でさえ読者には『文章が読みづらい』って言われてんのに、文字数の多いギャグとかバカだろ。季節感も狂うし、どっちで話を進めれば良いワケ? いま冬? いま夏? どっちだ? ん?」
それに答えたのは、炬燵の中に座り直した新八と、二個目のミカンを神楽から貰った揚羽だった。
「ああ、一応『冬で進めてください』との事です」
「外は雪が降ってるって朝のニュースで言ってたよ!」
「んだよ、『小説を投稿したのが夏ですアピール』しておきながら、結局『冬』で進めんのか面倒くせェ」
呆れた表情で、銀時は悪態を吐く。今までの応酬は果たして必要だったのだろうか。そんな疑問と不満を胸に、彼は炬燵に肘を立てて頬杖をした。
その様子に同調するかのように、神楽が根本的な問題を持ち出す。