第5章 居候。
奥の部屋にある寝室のベッドにマリアを寝かせたレインはヘトヘトになっていた。
普段力仕事をしないレインにとって、この程度の運動でもすごく疲れてしまうのだ。
レイン「はあ…」
力尽きてベッドの傍に座り込む。
そんなレインを見たソラは無言で先程までいた部屋に行き、椅子に腰をおろした。
今まではマリアやレインがいたから悲しんでいる姿や不安な表情は見せるまいと頑張ってきたソラであったが、もうガマンの限界だった。
瞳が潤んだかと思うと、次の瞬間には大粒の雫が強く握った拳の手の甲に落ちた。
これからどうするのかという不安と、自分がいなくなった虹はどうなっているのかという心配とが混ざった深い深い涙だった。
こんな姿は誰にも見せたくないと思った。
甘えようと思えば甘えられた。
レインもきっと冷たい態度であしらうかもしれないけれど、きちんと受け止めてくれる。
けれどあえて一人で静かに涙を流すのは少女なりの優しさなのだろう。自分と同じくらいレインも不安なのはなんとなくわかっていたからこそ、見せたくなかったのだ。
ソラ「…っ」
時折声が漏れそうなときもあるが耐えた。
どれだけの時間泣いただろうか。
ふと頭の上に温かいぬくもりを感じた。
ハッとして後ろを向くと、レインが視線をそらしながらも優しく頭を撫でてくれている。
ソラ「レイン……」
呟くと目が合った。
何も言わずに微笑んでくれるレインにまた涙が溢れた。
レイン「…雨になっても知らないよ」
そういってレインはソラを優しく抱きしめた。
ソラ「…っありがとう」
ソラはまるで不安も心配も全てかき消すかのようにひとしきり声をあげて泣いた。
大丈夫、絶対に戻れる。
何故かわからないけれどそう感じたのはソラだけではなかった。