第2章 従順で変態な真田弦一郎は犬
家に帰り、手洗いを済ませソファーに座る
実家を離れ姉と二人暮らしだが、姉は彼氏の家から帰ってこない。
姉は私と何もかも逆だからきっと、それはそれで楽しい生活だと思う。
ゆっくり紅茶を飲みながら今日の真田を思い出す
見上げる瞳
私たちの間で、真田が私を見上げるのは日常の事。
まるで犬のように這いつくばり、餌を貰い、粗相をすれば躾けるし、良い子なら褒美もあげる
普段の厳格な真田からは想像もつかないだろう
しばらくくつろいでいるとドアの開く音がした。
洗面所に行き、手をあらう音と、衣服を脱ぐ音がする
それも、少し急いでいるような音
急いでいつのも定位置に裸でお座りする犬
人の家でドタバタするのは少し品が無い
ため息をつき、カップをテーブルに置くと犬は残念そうな顔をした。
「伏せ、して」
足を組み、伝えると犬は頭を地面に付け、土下座の伏せポーズをとる
そしてこちらの顔色を窺うように少し頭を上げる
「誰が、頭上げていいって言ったの?」
犬の頭に足を乗せ、少し体重をかけると、おでこがカーペットに沈み、小さく謝罪が聞こえた
「マンションはペット禁止なんだよ、うるさいと追い出しちゃうからね」
ぐり、
頭を踏みつける
それだけで幸せそうな吐息を吐く犬に少し笑った
「弦一郎、私怒ってるんだよ?嬉しそうにするなんて、だめよ」
足を頭から退かし、顔を上げるようにあごを足先で持ち上げる
「すまない、お前に逢うのが待ち遠しくて 少しはしゃいでいたんだ」
まっすぐ目を見つめ熱っぽくつぶやく真田に甘くしてしまうのは やはり可愛い犬だからだろう
「そう、嬉しかったのね、じゃあ許すしかないわね」
そう言ってカップを持ち温くなった紅茶を口に含む