第1章 本編
「ゼイ…ゼイ…」
俺は息が上がっても走りつづけた。体力の限界など、とっくに越えていた。50分後、○×中央病院に着いた。
「今運ばれてきた来た。女の子は!?」
俺は病室まで走った。
───ガラガラ…
そこには峰が横たわっていた。
「…おい」
俺は声なく呼び掛けた。そこには、動かない峰がいた。管を通され、人工呼吸器を取り付けられている。
「返事しろよ!峰!」
勿論、返事など返って来るわけもない。
「クソッ!」
俺は荒々しくイスに座った。その時、病室のドアが開いた。
「あ…」
そこには、峰のお母さんがいた。
『亮君…』
「峰さんはどうなんですか!?」
峰のお母さんは、首をフルフルと横に振った。俺は愕然とした。
「峰はもう…目を覚まさないんですか?」
『…解らないわ』
呼吸器を取り付けられている不二子を見て、俺は酷く後悔をした。
「峰…目を開けろよ!なぁ!テニスするんだろ!?それで、俺に勝ってジャンボ食べるんだろ!?」
俺は起きるはずもない峰に語り続けた。手を握りしめ、懸命に語り続けた。
「お前は、俺に勝ち越しのままいなくなるのかよ!」
─────ピクッ
微かに峰の指が動いた。
「峰!?」
俺は峰の顔を覗き込む。目を閉じていた峰がゆっくり目を開けた。
「峰…」
「りょ…お母さ…」
峰は俺達を呼んだ。これは奇跡に近かった。
「ごめ…さい…」
「喋るな。今先生呼!?」
峰は俺の指を掴む。勿論、力無く…
「お母…私…」
『峰ちゃん…』
「ごめ…なさ…先に…逝…けど…許し…あり…がと…」
『・・・・・・・うっうっ』
峰のお母さんは泣き出してしまった。勿論、もう駄目だって事も知っていたに違いない。
「亮…ごめ…せ…かく…試あ…ジャ…ボ…食…たか…た…な…ねぇ…りょ…キス…し…」
「峰…」
俺は峰にキスをした。何度も何度も…峰が生きている証を確かめるように…