第1章 本編
暫くして、日も傾き始めていた。
「じゃあそろそろ帰らなきゃね…」
「あぁ…」
───CHU───
「!?」
「亮が負けないようにw願掛けだよ♪」
峰は俺にキスをした。今俺は耳まで真っ赤だろう。夕暮れで良かった。俺達の顔は夕日に照らされ、オレンジに染まっていた。
「なっ!?何しやがる!」
「何って、キスしただけだよ」
峰はさっぱりし過ぎで、何事もストレート。俺には刺激が強すぎるぜ…けどまぁ。今回は俺も男を見せるか…
「峰…」
───CHU───
俺は峰にキスをした。そっと触れるだけの…
「…えへ♪何か照れるね?」
「あ、あぁ…」
俺達は手をつないで駅に向かった。電車がホームに入るまで、ずっと手をつないでいた。これが俺達の、最初で最後の幸せな時間だった…
─────翌日 16:50
俺達はいつもの場所で峰を待っていた。しかし、待ち合わせの時刻を過ぎても、峰は現れなかった。
「部活でも長引いてんのか?」
俺はそんなことを考えていた。
───ピーポーピーポー…
近くで救急車の音が聞こえた。少しして、サイレンの音もしなくなった。
「また事故か…最近やたらに多いなι」
───パタパタ…
『ちょっと!今の事故、女の子みたいですよ?』
「?」
遠くのおばさん達の会話が聞こえてきた。
『本当!?それは可哀想な話だねぇ…』
『即死みたいですって』
『原因は?』
『飛び出しらしいですよ?目撃者がいたみたいで…』
「!?」
『あらまぁ…お気の毒だねぇ…』
俺は胸騒ぎがした。手にじっとりと汗が滲む。
「すいません!今の事故、どこですか!?」
俺は走った。走って走って、人だかりを見つけた。
「スイマセン!通して下さい!スイマセン!」
俺は人混みを掻き分けて、現場に出た。
「!」
そこには大量の血と、ガラスの破片が散っていた。
「な、何だよこれ…」
俺は動転した。そこには見慣れた、峰のテニスバックが転がっていた。
「スイマセン!女の子、どこに運ばれましたか!?」
俺は側にいた人に尋ねた。
『○×中央病院…』
俺はすぐさま全力で走り出した。