第2章 始まりは突然に
ー ありがとな。でもお前ん所に迷惑掛かっちまうし、嬉しいけどそれは遠慮しとくよ。安心しろ、仕事では女って事隠して働く事にしてっし、店のホスト達ともあんま関わんねーようにするしよ… ー
ー …ほんと? ー
ー ああ、だからそんな顔すんなって♪ ー
カラカラと笑って少し涙目になっているサブローの目元を服の袖で拭ってやる。
ー あ、たまにメシはご馳走になっかもだからよろしくなwww ー
ー うん!いつでも来てよ、母さんに言っとく!! ー
ー ははっ、頼んだぜ♪ ー
やっと笑顔になったサブローの手を引いて、俺達は家路に着いた。
…懐かしい、過去の記憶。
あいつは普段フラフラしてっけど、昔から俺の事になるとムキになってた。
『他の事にもムキになれよ』とか口では言いつつ、実は密かに嬉しかったりした。
大事な弟分に懐かれるのはやっぱり嬉しいもんだ。
…あいつが突然失踪してから、もう20年以上の月日が流れた。
最初こそ新聞やニュースなどで騒がれていたが、いくら捜査してもサブローは見つからなかった。
死亡したのではという事も囁かれたが、真相は結局謎のまま、次第にこの事件は迷宮入りとなった。
(あいつ、今何処で何してんだろうな……)
天井を見上げ、ぼんやりと考える。
女3「…潤?……潤!!」
客の呼び掛けでハッと我に返る。
『えっ、あ、あぁ…悪りぃ』
女1「もう、あたし達が居るのにボンヤリしちゃって!!」
女4「他の女の事でも考えてたんでしょ!?」
『ちげーよ、ちょっと昔の事思い出してたんだよ』
女5「昔の事?」
女1「な〜に、昔の事って?」
『いや、たいした事じゃねーんだ。それよか英子さん、あんた帰らなくていいのか?旦那アッチの筋の人だろ?そろそろ帰っとかねーとマズイんじゃねーのか?』
話を変えようと隣に座っている派手な格好をした年配の英子という女に話を振る。
今言ったようにこの女の旦那はアッチの筋…つまり極道だ。
この辺りでも有名な組の組長らしく、英子さんは言うならば極妻というわけだ。
英子「大丈夫よ♪あの人九州の方行ってて暫くは帰って来ないし♪それよりも潤、この後アフターどう?」
そう言いながら英子さんが俺の太腿を撫でる。