第3章 再会
帰蝶「殿が泣いておられる姿など、初めて見た。涙を見せるまでに殿が心を許しておる方なのじゃ。案ずる事などありません」
帰蝶は柔らかく微笑む。
心からサブローを信頼しているからこその言葉だ。
お市「…………」ムッス〜
帰蝶「?お市殿…どうしたのじゃ?」
隣で不機嫌そうに顔を顰めているお市に帰蝶が問い掛ける。
お市「つまりませぬ!市達の前で見せた事のない涙をあの者の前で見せた事もですが、市には抱き着いてくれぬのにあの者には抱き着いておられた事が!!それに…兄上のあの者を見た時の顔……とても嬉しそうでした。市の前ではあんな顔してくれぬのに……市はつまりませぬ!!」
どうやら大好きな兄が自分にはしてくれない事を他人にした事が気に入らないようだ。
帰蝶もお市のその言葉を聞いて少し顔を歪める。
帰蝶「確かに殿のあの様なお顔…今まで見た事がないのぅ。あの方にはお見せになったのに……。やはり、少し悔しいものじゃのぅ……」ショボン
確かに自分の兄、夫が自分達の前では見せない顔を他の者に見せるのは心苦しい。
そんな二人を見て尚更皆、サブローと女の関係が気になって仕方ない。
ーー 信長・自室
一方此方ではそんな事など知りもしないサブローと光秀が今までの事を説明しているとこだった。
光秀は既に覆面を外している。
同じ顔の二人を交互に見比べ、頭の中を整理する女改め潤。
二人が潤に話した事はこうだ。
まずサブローが土手から落ちタイムスリップした事。
その時偶然落ちた場所で光秀こと本物の織田信長と遭遇し、信長の代わりを頼まれた事。
そしてサブローは織田信長になる決心をし、今まで生きてきた事。
本物の織田信長は明智家の養子となり、明智家を継ぎ明智光秀として生きる事になった事。
家の為に家臣として織田に再び戻ってきた事など、今までのだいたいの経緯は説明した。
光秀「…この様な説明でお分かり頂けたか?」
『ああ、ありがとう。でもまさかサブローが織田信長だとはな〜。俺の後ろにず〜っとひっ付いて回ってたチビ助のサブローがあの有名な信長とか…クッソワロタwww』
サブロー「ひっどーい!俺チビじゃね〜もん!うる兄が無駄にデッカいだけだもん!!」ムスッ
潤の言葉にサブローはムクれる。