第1章 暑い
だんだんと辺りは暗くなり、いくつかの星が見えてきた。
ひなはうつむきがちになり、暗い顔をして一切何も口に出そうとしない。
俺は沈黙が嫌いだ。
今だけは敢えて空気を読まない。
「…なぁ、さっきなんで急に大声出したりしたんだ?」
「………。」
「俺、誰にも言わねえ。」
「…」
「約束する。」
俺をまだ信用してくれていないのかひなは下げた顔を上げない。
ひなの表情は薄暗くて伺えない。
そんな時、口を開いた。
「………アイス食べたい。」
「は?」
急に何を言いうんだ、と言いたい衝動を抑えて俺はもう一度ひなに聞き返す。
だが、帰ってきたのは「アイス食べたい。」それだけ。
「アイスって美味しいですよねー…私の一番好きな食べ物なんです」
なんて反応すればいいのかわからないままひなのことを見ていた。
「なんか、お前ってわかんないやつだな…」
つい本音が出た。
「はい、その通りです。」
ひなが愛想ではない笑顔を俺に向けた。気がした。