第1章 暑い
何時間なのか、何分なのか、正確なことはわからないが辺りが暗くなり始めてることから結構な時間話していることが分かった。
「お前、帰んなくて大丈夫か?」
ひなは名残惜しそうに「帰ります」とだけ言った。
「じゃあ俺様が直々に家まで送ってやる!お前の家、どこなんだ?」
「えっ…い、いや!大丈夫です、一人で帰れます」
「いや、何かと最近物騒だしな。女一人でふらつかせんのはこっちが嫌だぜ。」
「物騒も何も…ここらへんには変な人いないから大丈夫ですよー」
「……そういう根拠のない安心はどっから出てくんだ…。」
呆れ半分に俺がひなを見ると、いかにも俺が何を言っているのか分からない、と言う様な表情でこっちを見返してきた。
「あぁ、もう何でもいいから送らせてくれ…」
「け、結構です!」
「言葉を選んでくれ!」
「何を騒いでいるんです?」
「「!!!?」」
振り向くと、少し眉間に皺をよせた本田が居る。
気づかないうちにルッツ達3人は戻ってきていた。
不意に声をかけられた俺とひなは同時に跳ね上がった。
ひなの顔は心なしか青く変わる。
「内海さん、先ほどはわざわざお野菜を持ってきていただいてありがとうございました。お使いでも頼まれたのですか?あまり無理なさらず外には出ないほうが―――」
「無理なんてしてない!私はこうしたいの!!」
急に大声を出したひなは即座に我に返り一言だけ謝るとその場を後にしようとした。
俺は慌ててひなについていく。