第4章 過ぎる
「じゃ…じゃあ!私、絶対ドイツには行きたいです!」
「……え?ど、…どうして…だ?」
「私、本当にあの国が好きなんです!歴史も、街並みも、食べ物だっておいしそうなのたくさんあるし…とにかく、一番行きたい国なんです!」
ルッツのことだけど、俺がどこか褒められてる気がして嬉しくて…戸惑った。
そして、どうしてかこんなことが聞いてみたくなった。
「…あのよ、お前"プロイセン"って国のこと…知ってるか?」
「…プロイセン…?ですか…?」
頭の上に疑問符を浮かべるひなを見て少し脱力してしまった。
そりゃ知らなくても仕方ないんだけどな。
少し期待しちまったんだ。
コイツだったら俺のこと知ってくれてんじゃねえかな、って。
「もとはドイツ騎士団で、それがプロイセン公領になり、一つの国…プロイセン王国になったんだ。そりゃもうすっげー強くてかっこいい軍事国家だったんだぜ?」
頼まれてないのに説明を始めた。
どうしても知っていてほしかったんだ。
「今はもう国っつう形じゃねえけど…存在はするんだ。
俺の言ってること、訳分かんねえよな…気にしないでくれ。」
自分でも何が言いたいのか最終的に分からなくなり笑い、誤魔化す。
喉の奥がきゅっと締まり目頭が熱くなるのを感じながら顔を逸らした。
「………聞いたこと、あるんですけど…、
この世で"国"が、"人間"として存在しているって…。
私、この話…実は信じているんです。
馬鹿だな、って笑っても構いませんよ」
そのとき俺の堪えていたものは努力もむなしく溢れだした。