第4章 過ぎる
楽しい時間は本当にすぐに過ぎちまうもんだ。
気が付けば夏は過ぎ、いきいきとした緑色の葉も赤く染まっていった。
蝉の声はもう、聞こえない。
それはひなの咳も同じになりつつあった。
「最近ひなの体の調子いいな!」
「ギルベルトさんのおかげですかね」
窓辺のベットに横になりながら楽しそうに笑うひなの顔を伺うと、どう見ても普通の"女の子"だ。
「長くは生きられない」なんてのは嘘なんじゃないかと疑う俺が居る。
夏の終わりに、ルッツとフェリシアーノちゃんは訓練を終えてヨーロッパに戻って行った。
本当は俺も一緒に戻るはずだったが、本田に無理言って何か月間か住まわせてもらうことにした。
勿論、何もしないでただ過ごしてる訳じゃねえ。
本田の手伝いとか、このあたりに住んでいる人たちの為なんかに働いてたりするんだぜ。
「…体の調子もいいことですし、外に出たいなぁー…なんて…」
ひなの額を指先で軽く叩く。
驚いて、びくっとする反応が可愛くてついもう一度叩いてしまった。
まぁ、叩いたというよりは…撫でた、に近いけどな。
「今は駄目だな、でもちゃんと元気になったら俺が世界一周連れてってやるぜ!」
「ほっ…本当ですかっ!?」
「あぁ、本当だぜ。俺は世界中のみんなと友達だからな!」
多分、と語尾に心中で付け加えた。←
ちゃんと元気になったら世界一周に連れてく、ってのは本当だけどな。
俺は正気だ。