第3章 望む
「……なぁ、ルッツ…」
「なんだ兄さん。その顔、気持ちが悪いぞ。」
俺はあの後1時間ほどひなの家に上がり、ひなが寝るまで見守っていた。
だけどその間、ひなの保護者らしき人物を見ることは無かった。
病気のか弱い女を1人にしておくのは気が引けるが、こんな時間に見知らぬ男を家にあげてる方がひなの保護者としては心配だろうから、俺は家を後にし、今に至る。
それに、ひなに合鍵渡されたしな。
俺を信用してくれてるのは嬉しいけど、会ってそんなに経たないヤツに鍵を渡すのはどうかと思う…。
でも、やっぱり信用してくれてるのは嬉しい。嬉しすぎる。
「俺は今世界中の人に分けてやりたいぐらい幸せだぜ」
「そうか。ではとりあえず紛争地域にでも行ってその幸せを分けに行くといい。」
「おう、そうだな!」
「…………今のは俺の渾身の冗談だったんだが…」
「ん?」
「いや、なんでもない。」
パーカーのポケットに手を入れると、鍵に触れた。
その鍵を握ると、新しい幸せをかみしめるような感覚に陥る。
幸せ、という言葉よりは、確かな繋がりを手に入れた喜び…っつーのかな。
とにかく顔がにやけるのは抑えられなかった。