第2章 感情
「うーわぁ…すげえな」
今まで見たことのないような風景を目の前に俺の口は開いたまま閉じない。閉じてくれない。
俺は本田に道を教えてもらい、3人が訓練に出かけている間例の穴場へと向かった。
本田の家を出て約15分、家の裏山に入ったところを西方向に真っ直ぐ進むとその景色は広がる。
一面に広がる湖に映るのは一段と晴れ渡った空と、
四季の日差しを浴びて育った木々たち。そして、さんさんと輝く太陽。
俺の全身は自然の音に包まれる。
コンクリートと機械で創られている『俺が知る世界』にもこんな風景がある、と考えると少し不思議な感じだ。
俺の考える、思う、感じる世界の狭さには自分でも驚く程だ。
「ひなはこんな世界を見続けて育ってきたのか」
俺の髪を揺らすように心地いい風が通る。
あぁ、またひなの事を考えているな、そう思いながら
気の幹に寄りかかり、目を閉じる。
木漏れ日がいい具合だ。
目を開けなくても分かる。
「ひな、居るんだろ?」
俺の寄りかかってる木の裏から、案の定ひなが出てきた。
俺は片目を薄ぼんやり開け、にかっと笑う。
というより、無意識に口角が上がった。
ひなは俺の前に座ると、小さな肩を震わせて笑い出した。