第1章 奥まで愛して
『素敵な公演になりそうですね』
「あ゛?」
「リヴァイの王子様期待してるよ!」
「おい……俺はまだ納得してねぇぞ」
「真実の愛で傷付いた人類を癒そう」
「エルヴィン…お前まで……ふざけるのもいい加減にしろ」
次々に畳み掛けられても尚、王子役を断り続ける兵長。
頑として譲るつもりはないらしい。
「俺でなくとも適役はいるだろうが」
『確かに……いますけど』
エレンとか。
ジャンとか。
あ、あいつは馬役だから駄目か。
私は思いつく限りの王子適任者を並び立てていった。
「じゃあそいつらに任せろよ」
『駄目です』
「あァ?」
『兵長じゃなきゃ駄目なんです』
「だから、何でそうなるんだ……‼︎」
兵長は今度こそ殴りかかって来そうな勢いで青筋を立てる。
ビクリと身を縮める私を庇うようにして、団長が言葉を引き取ってくれた。